相続・被相続人が居住していた不動産の売却事例 2024.11.18
お客様の事例
時期 | 令和6年7月末に引渡を完了 |
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所在 | 宮城県岩沼市桜 |
地積 | 約130坪 |
価格 | 2,570万円 |
概要
被相続人が居住していた土地建物について、相続人に利活用する予定はなく、売却方法や金額などについて相談をいただきました。できるだけ面倒な手間をかけず、このまま引き取ってくれる買主を探して欲しいという内容でした。
土地は、建築基準法に定める道路に接道しておらず、建物を建築する場合には諸々の手続きを踏んだうえで自治体の許可(建築基準法43条2項2号の許可)が必要であり、道路を共同利用する周辺地権者に道路の利用と掘削、埋設されている上下水道管の共同利用に関する同意を取り付ける必要がありました。
建物が複数あり、すべて未登記。一部は建築された時期が不詳なため、被相続人の居住用財産を譲渡した場合の特例(3,000万円控除)を受けるためには、建物がすべて昭和56年以前に建築されたことを説明し、解体して更地で売却したことを証する必要がありました。そのため、そのまま引き渡すことはこの要件を満たさないことから、相談を受けた時点で建物の除却は売主様が行う必要があることを説明しました。
調査
調査の過程で以下の様に課題が整理されました。
- 宅地が接する道路は、建物を建設する際には建築基準法第43条第2項2号の許可が必要な道路、いわゆる但書き道路(以下「前面道路」といいます)であること。
- 宅地は130坪と大きく、ひと宅地として購入する個人の買主はあまり期待できないこと。
- 宅地を建売用地などとして分割する場合、前面道路に埋設された既設の上水道管からの分岐はできず、前面道路が接続する市道(西方に約60m)から、新たに上水道管を引き込む必要があること。また、この工事のために道路掘削の許可(同意)を、前面道路を共同利用する地権者すべてから取り付ける必要があること(いずれも行政の指示)。
- 下水道は、前面道路に埋設された既設の下水道管を利用できるが、前項同様、下水道管を共同利用する地権者すべての許可を取り付ける必要があること(行政の指示)。
- 建物の建築時期については、固定資産税課税台帳上もっとも新しい建物の建設時期が昭和52年であり、その台帳記載事項証明書・建築計画概要書記載の図面から、すべての建物が昭和52年以前に建設されていることが説明できること。
- 建物は未登記なので建物滅失登記はできないものの、解体業者が発行する建物取毀証明書と、課税台帳に登載されている建物を抹消するために自治体に提出した建物滅失の届出で譲渡時点で建物が除却されていることも証明できること。
- 境界標識が確認できない箇所が多いこと、敷地に自治体所有の水路敷が含まれていることから、当該部分を自治体に返還する必要もあるため、境界確定測量は必須であること。
提案と経過
調査の結果を随時報告しながら、そもそも大きな土地なので個人の購入希望者は少ないであろうこと。様々な課題を解決しながらの譲渡の契約・引渡しとなるので、売却先は一般の消費者より、取引に関する細かな内容やわずかに生じるリスクも理解して買い受けられる建売業者等が望ましいと考えられること。境界確定協議・測量と建物の解体工事は、売主負担で実施した方が良いこと。近隣の地権者の道路掘削などの同意や行政への説明などは弊社が行うことなどをご説明し、業者向け・一般消費者向けそれぞれのサイトに情報を公開して買主を探索することにしました。
情報の公開後比較的短時間で、以前から複数の取引実績のある同業者から購入の申し込みがあり、買主は、土地を分割して建売住宅を3棟建設して販売、若しくはそのまま宅地として販売することもあるという内容で売買契約を締結しました。なお、前述の調査の内容にあるとおり、市道から上水道管を新たに引込し直す必要があるため、当該工事に必要な費用を代金から値引きする形で契約を締結しました。
引き渡しまでの間に、境界確定測量と解体工事を完了し、一部地権者にはなかなか了解が得られず多少難儀しましたが、売主の協力も得ながら地権者すべてから同意を取得し、行政への報告も済ませ、買主が建築基準法第43条第2項2号の許可を取得できる状態にして無事引き渡しを完了しました。
引き渡し後、売主とともに自治体窓口に赴き、被相続人居住用家屋等確認申請書を提出しました。申請書に添付した書類は以下のとおりです。
①土地の売買契約書の写し(契約の内容を明らかにするため、建物を除却することなど)
②登記全部事項証明書の写し(被相続人の財産であることを証するため)
③解体工事請負書の写し
④建物取毀証明書の写しと完了写真
⑤媒介契約書の写し
⑥販売資料
⑦台帳(建築物)記載事項証明書の写し
⑧被相続人の保険証(介護)の写し
⑨介護保険資格者証(介護保険暫定被保険者証)の写し
⑩電気料金請求内訳書(直近の物)
⑪水道料金の調定状況一覧表
⑫被保険者のグループホーム入所時の利用契約書の写し
⑬被相続人の住民票除票の写し
⑭相続人の住民票
⑮売却後所有権移転済みの登記全部事項証明書
自治体窓口に確認を取りながら、上記の書類を提出し、被相続人の居住用家屋等確認書の交付を受けました。
これにより、被相続人の居住用財産を譲渡した場合の特例が適用され、売買代金も控除額の範囲内であることから譲渡所得税を支払わずに済ませることになりました。
スケジュール
令和6年3月 相続登記等を行った司法書士経由で相続した不動産売却の相談を受ける
相続人に不動産の利活用の予定はないことから、売却するための調査を開始
4月初旬 調査結果を基に売却に要する費用と査定価格について説明
4月中旬 媒介契約を締結・情報を公開し、買主の探索を開始
4月下旬 同業者から購入の申込
5月上旬 解体工事と確定測量を開始
6月上旬 近隣地権者の道路掘削等同意の取得に着手
6月中旬 解体工事を完了
6月下旬 近隣地権者の道路掘削等同意の取得を完了
家屋の滅失届を自治体に提出
7月上旬 境界確定協議完了・測量図完成
7月下旬 引渡完了
8月中旬 被相続人居住用家屋等確認申請書を提出、確認書を受領
お客様の声
解体工事に着手する前の建物内の残置物等の整理と境界確定のための立会は売主様ご本人にお願いすることになりましたが、道路掘削等の同意取得がなかなか得られなかった一部の地権者宅への同行を除き、ほぼすべての作業・手続きは当社が代行したため、当初のご希望通り手間をあまりかけることなく比較的短期間で売却することが叶いご満足いただきました。
今回の取引は、被相続人の居住用財産を譲渡した場合の特例が受けられるため、確かに被相続人がその地に居住しており、特例を受けるための要件がすべて満たされていることを自治体から確認書の交付を受けなければなりません。この確認申請には多くの添付書類が必要で、その多くを当社で準備して差し上げることができたため、大変感謝していただきました。
難しく、手間の掛かる案件でしたが、当社としても実績を重ねることができ、やりがいのあるお仕事を頂戴することができて嬉しく思いました。