家の相続!後妻とその子だけで相続する方法とは? 2025.05.27

<このようなお悩みの方へ>
・前妻と後妻の両方に子がいる場合の相続はどうなる?
・後妻とその子だけに遺産を渡す方法はあるの?
・遺産トラブルを避けるために何をするべき?
前妻と後妻の両方に子がいる場合、相続をめぐってトラブルになるケースがあります。
離婚してから前妻との交流が一切なくても、前妻との子には相続権があるため、遺産の分割協議などに加わってもらう必要があります。
そこで、後妻とその子だけに遺産を渡すためには、いくつかの注意点を理解したうえで生前からできる対策をしておきましょう。
<この記事でわかること>
・前妻の子の相続権
・後妻とその子だけで相続する方法
・前妻の子との相続トラブルを避けるための対策
まず知っておきたい!前妻の子の相続権とは?
離婚歴がある夫が亡くなった際、遺産は誰に渡るのか気になる人も多いでしょう。
現在の配偶者とその子に相続権があるのはわかりやすいのですが、問題になるのは前妻とその子の相続権です。
ここでは、前妻の子が法定相続人になる点や、法定相続分の基本的なルールについて解説します。
前妻の子も「法定相続人」になる
結論として、離婚歴のある夫が死亡した場合、前妻の子は法定相続人になります。
法定相続の優先順位は、後妻とその子と同じ順位です。
よって、配偶者が受け取る50%の残りを後妻の子と均等に相続します。
離婚していた場合でも、法律上では被相続人が前妻の子の父親である点に変わりはありません。
よって、被相続人と前妻の子は、親子関係が成立すると判断されます。
一方で、前妻は一時的に夫婦関係にあったとしても、被相続人(夫)の死亡時に婚姻関係がなければ「配偶者」に該当しないため、法定相続人にはなりません。
つまり、夫が亡くなった際の相続では、配偶者が半分、残りの半分を前妻の子と後妻の子たちで分配します。
前妻の子が複数いれば、必然的に一人当たりが受け取れる相続分が少なくなるため、後妻の子の法定相続分が減ります。
そういった事態を避けるためには、生前から何かしらの対策を講じておかなければなりません。
法定相続分の基本ルール
法律では、被相続人の配偶者は必ず法定相続人となります。
法定相続人になれる配偶者は、被相続人が死亡した時点で婚姻関係にあった場合のみです。
離婚などの理由で婚姻関係が消滅している場合、法定相続分はありません。
配偶者以外の法定相続人の優先順位は、以下のとおりです。
- 第一順位:子供、孫
- 第二順位:父母、祖父母
- 第三順位:兄弟姉妹、甥姪
配偶者の次に相続権を得られるのは、子です。
ここでいう子とは、被相続人の死亡時に婚姻関係にあった人の子に加えて、養子縁組をした子、前妻の子のことです。
被相続人よりも先に子が全員死亡していると、被相続人からみた孫が相続します。
被相続人の子と孫が全員死亡していて、ひ孫がいる場合、再代襲相続が発生します。
子、孫、ひ孫がいなければ、第二順位、第三順位と順番に相続権がまわる流れです。
法定相続分は、被相続人が死亡した時点の妻が50%になり、残りの遺産をほかの法定相続人で分割します。
離婚歴があると、後妻の子が受け取れる遺産の量が減ってしまう可能性があるので、前妻の子にどうしても相続させたくない、若しくは相続させる割合を変えたい場合などには、生前から対策を講じておくことが必要です。
後妻とその子供だけで相続する方法
離婚をしていたとしても、法律上では前妻の子と親子関係が存続しますので、法定相続人として遺産を受け取る権利があります。
離婚後の家族関係はそれぞれ異なるからこそ、もしも今の家族にだけ相続させたいのであれば、そのための準備をするべきです。
ここでは、後妻とその子だけで相続する方法について解説します。
夫が生前に「遺言書」を作成する
相続をめぐるトラブルを回避するためには、遺言書が有効です。
遺言書の効力は強く、法律で決められている法定相続分よりも優先されます。
あらかじめ遺言書に「遺産は、今の家族に渡したい」という内容を記載して保管しておくと、遺産をすべて今の家族に残せる可能性があります。
ただし、前妻の子には遺留分の権利があるため、遺言書の存在を知って遺留分侵害額請求をされた場合、遺留分の支払いが必要です。
遺言書には、公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類があります。
公正証書遺言 | 自筆証書遺言(遺言書保管制度の利用あり) | 自筆証書遺言(遺言書保管制度の利用なし) | |
保管方法 | 公証役場 | 遺言保管所 | 自由 |
家庭裁判所の検認 | なし | なし | あり |
費用 | 有料 | 有料 | 無料 |
遺言書は、自分で書いたものを自宅に保管しておくことも可能です。
ただし、遺言書を書いていたとしても、家族が保管場所を知らなかったり、忘れたり、誰かが故意に隠蔽しようとしたら、遺言の効力がなくなります。
そのため、遺言書の保管方法に不安がある場合は、公正役場が保管してくれる公正証書遺言もしくは、法務局の遺言書保管制度を利用する自筆証書遺言を作成しましょう。
なお、遺言書では二次相続以降の指定はできません。
たとえば、「後妻に全財産を渡す。その後、後妻がなくなったら不動産を前妻の子に渡してほしい」のような遺言をすることはできません。別な方法を選択することになります。
このような財産の取得者を連続して指定する方法を後継遺贈と呼びますが、遺言書では認められません。
一度、後妻に財産が渡れば、その後の財産管理に関しては、後妻の家族が主軸となるので、被相続人の前妻の子との関係はなくなります。
前妻の子と「遺産分割協議」で合意する
基本的に遺言書がなければ、法律のルールに則って財産をどのように分割するかを決定するため、前妻の子を交えた遺産分割協議をおこないます。
遺産分割協議では、法定相続人が全員合意するまでは、正式な手続きを進められません。
戸籍の附票などから前妻の子の所在がわかるので、遺産分割協議が必要になれば、早めに連絡をして話し合いをする日程を調整しましょう。
もしも、今の家族だけで遺産を分けたい場合、この話し合いで、遺産を受け取らないと受け入れてもらう必要があります。
親交のあった家族間でも相続トラブルはよくあるため、ほとんど面識のない前妻の子と、スムーズに話し合いが進むとは限りません。
前妻の子が権利として法定相続分の受け取りを希望する場合、法律のルールにあわせて遺産を分割します。
もしも、今の家族の希望をのんで相続を辞退した場合、その旨を記した遺産分割協議書を作成するか相続放棄の手続きしてもらいます。
なお、前妻の子の希望を無視して遺産分割協議をおこなった場合、法定相続分の返還を求める訴訟を起こされるおそれがあるので注意が必要です。
前妻の子の権利が無視されている状態であり、より複雑なトラブルに発展してしまうので、正当な手順に沿って遺産分割協議をおこなってください。
養子縁組を活用して後妻の子の相続分を増やす
法定相続人として認められる子は、被相続人と血縁関係がある場合に限られます。
つまり、後妻に連れ子がいる場合、血縁関係がないため法定相続人にはなれません。
血縁関係がなくても親子としての関係を築いてきたのであれば、自分の遺産を渡したいと考えている人も多いでしょう。
その様な場合には、養子縁組をすることで血縁関係のない連れ子にも相続権が生じます。
婚姻関係があれば、血縁関係がなくても親子として認められると間違った認識を持っている人も多いので、連れ子を法定相続人とするためには、必ず養子縁組をしておきましょう。
「遺留分」に注意!前妻の子が最低限もらえる権利
遺留分とは、法定相続人に最低限保証された遺産を相続できる割合です。
たとえば、被相続人が今の家族だけにすべての財産を渡すために遺言書を残したとします。
遺言書が認められると、前妻の子の相続権は一時的に剥奪されます。
しかし、前妻の子が遺留分侵害額請求をおこなうと、最低限保証された割合の遺産を取り戻せるというものです。
遺留分侵害額請求をできる人は、以下のとおりです。
・配偶者
・子供、孫
・父母、祖父母
兄弟姉妹、甥姪は、遺留分侵害額請求の対象にならない点に注意が必要です。
遺留分侵害額請求の期限は、相続が開始したこと、遺留分を侵害する相続、贈与、遺贈を知った日から1年以内、若しくは遺留分侵害を知らない場合は相続の開始から10年以内と決められています。
いずれかの期限を過ぎると時効となりますが、遺留分を侵害する財産の分割をおこなった場合、相続開始から10年間は遺留分侵害額請求の可能性があると考えておきましょう。
前妻の子とトラブルにならないための対策

後妻とその子に財産を渡したいと思っていても、本来は相続する権利のある前妻の子が、その事情を受け入れてくれるとは限りません。
相続トラブルは泥沼化するケースも多いからこそ、円満に相続手続きをするためには、生前から対策をしておくことが重要です。
ここでは、前妻の子と相続トラブルにならないための対策方法について解説します。
遺留分の代わりに現金や生命保険の用意
後妻とその子に財産をすべて相続してもらいたい場合、それを納得できるだけの現金や生命保険を前妻の子に渡す約束をする方法があります。
とくに、不動産のように分割がむずかしい財産に関しては、共有名義にするとトラブルになりやすいです。
共有名義の不動産をリフォーム、解体、売却するためには、共有者全員の合意、手続き時に署名や押印が必要になるからです。
よって、前妻の子が共有者になると、何かあるたびにやりとりをして関係を持たなければなりません。
後妻とその子だけで相続できれば、不動産の管理もしやすくなるでしょう。
このような理由で、後妻とその子に引き継いでもらいたいと考えているのであれば、その旨を説明して代わりになる財産を用意すると納得してもらいやすいです。
生命保険は、受取人の固有財産として認められるので、前妻の子の名前にしておけば、ほかの法定相続人と分割する必要がありません。
このように遺産とは別の形で財産を渡す約束を交わしておくと、後妻とその子に遺産を相続してもらいやすくなります。
遺留分の放棄
遺留分の放棄とは、遺留分を請求する権利のある人が、その権利を自らの意志で放棄するケースを指します。
現金や生命保険を用意する代わりに法定相続人の権利を破棄してほしいと口約束していた場合でも、それが確実に守られる保証はありません。
被相続人が遺言書に「後妻とその子供だけに財産をまわす」と記載したとしても、前妻の子が遺留分侵害額請求をすれば、遺留分の受け取りができます。
遺留分の放棄は、被相続人が亡くなる前でも手続きが可能です。
被相続人が生きているうちに遺留分の放棄をする場合、被相続人の住んでいる地域の家庭裁判所に許可申し立てをします。
強制的に遺留分の放棄をさせるのは認められておらず、前妻の子が納得していると認められた場合のみ家庭裁判所が許可します。
そのため、遺留分を放棄してもらう前に、前妻の子と話し合いをして、正当な理由を用意してから裁判所に申請しましょう。
まとめ | 後妻とその子供だけで相続するには?
被相続人に離婚歴がある場合、後妻とその子のほかに前妻の子にも相続権があるため、相続時にトラブルになるおそれがあります。
もしも、後妻とその子だけに財産を相続してもらいたいのであれば、遺言書の作成、遺産分割協議での話し合い、養子縁組などの方法が有効です。
前妻の子供には「遺留分」を請求する権利があるので、生前から相続について話し合いをして、必要に応じて前妻の子に遺留分の放棄してもらいましょう。
「自分と子供だけで相続したい」と考えている方、法律で保障された権利を放棄、若しくは譲歩してもらう作業になるため、難易度がとても高い相談になりますが、ぜひ有限会社アラウズにご相談ください。

吉田 健一(有限会社アラウズ 代表取締役)
プロフィール
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/
相続支援コンサルタント(日管協)/不動産キャリアパーソン(全宅連)
宅地建物取引業者・賃貸住宅管理業者である有限会社アラウズの代表取締役として長年の経験を生かして土地建物の利活用の提案、
売買や賃貸住宅等の管理業務などに幅広く対応し、相続の生前対策や財産分与・処分などについて提携税理士や法律家とともに多くの相談を受けている。
また、公益社団法人宮城県宅地建物取引業協会の業務執行理事を務める。