マンション評価額、ネットで調べて終わっていませんか?|正確に知る方法と注意点 2025.06.20

・マンションを売りたいと考えているが、いったいいくらになるんだろう
・固定資産税評価額や相続税評価額って何が違うの?
・算出方法もややこしく自分で計算できなくて困っている
マンションの売却を検討される方にとって、物件の評価額がどのくらいになるかは気になるところです。しかし、不動産売買では専門的な用語が飛び交いやすく、不動産の資産価値を導く計算式もいくつかあります。
何をどうすればよいかが分からないために、十分に吟味できないまま売却活動をスタートさせる方も多いでしょう。
<この記事でわかること>
・マンションの評価額について各種評価額や実勢価格の違い
・訪問査定においてプロに査定を依頼するメリット
・マンションの評価額が変動する理由
そもそも「マンションの評価額」とは?
マンションや一戸建てといった不動産を売ろうとすると、評価額といった言葉を耳にします。
評価額とは、税金を計算したり査定をする際に基準となる資産価値を表す金額です。
誰がどのように決めているのか、評価額について知識を深めましょう。
売却価格=評価額ではない
不動産用語として、売却価格と評価額の意味は同じではありません。
売却価格:
実際に取引をおこなって不動産が売り買いされた金額。
評価額:
今、とある条件下で当該不動産を売り買いすれば、いくらになるであろうといった予想される金額。
直近の取引実績や経済情勢などが反映された指標が存在し、誰かが適当に決めたものではありません。
固定資産税評価額/相続税評価額/実勢価格の違い
不動産取引における評価額とは具体的に、固定資産税評価額と相続税評価額、実勢価格の3つがあります。
必要に応じて使い分けられているもので、それぞれの違いをまとめると下表のとおりです。
評価額の種類 | 誰が決めている? | 算出方法 |
固定資産税評価額 | 市町村 | 総務大臣が定める固定資産評価基準 |
相続税評価額 | 国税庁 | ・路線価方式 ∟土地の広さ×路線価・倍率方式 ∟固定資産税評価額×所定の倍率 |
実勢価格 | (時価) | ・公示価格×土地の面積×1.1・固定資産税評価額÷0.7×1.1・路線価 × 土地面積÷0.8×1.1・不動産会社に査定を依頼する |
固定資産税評価額は、不動産をはじめとした固定資産にかかる税金を算出するのに使う評価額です。
毎年手元に届く納税通知書に記載されています。
不動産を所有している事実に対して課税されるものなので、所有者本人の支払い能力に関わらず一律で課税されるのも特徴です。
相続税評価額は、相続が発生した際に財産の価値を決める評価額になります。
基本的には、土地の広さ×路線価で算出可能です。
路線価が設定されていない地域にある不動産については、倍率方式で計算されます。
実勢価格とは、実際に不動産が取引された金額を意味し、さまざまな評価方法のある評価額です。
評価額はご自身で、固定資産税評価額や路線価から目安を算出できますが、調べるのが得意ではない方や計算が苦手な方は不動産会社に査定を依頼するとよいでしょう。
不動産会社が出す「査定額」の意味とは?
不動産会社がおこなう査定によって決まるのが、不動産の査定額です。
査定額は、売りたい土地や建物の価格を決める際の目安になります。
売る側の立場に立つと、できるだけ高く売りたいと考えるのは自然ですが、売却価格が購入価格を上回る可能性はゼロに等しいでしょう。
実際、国土交通省の調査によれば、新築一戸建ての価値は築10〜15年で約半分まで減少し、マンションでも築10〜15年で約7〜8割ほどの価値しかないといわれているのです。
つまり、4,000万円で家を買った場合、10年後の資産価値は新築一戸建てで2,000万円程度、マンションでも2,800〜3,200万円程度の価値にしかなりません。
ただし、不動産会社のおこなう査定には、物件以外の情報も加味されます。
周辺に大型商業施設の建設計画が持ち上がったり、新しい駅やバス停ができたりすれば、土地の評価が上がるので不動産の価値も向上するのです。
こうした不動産の価値を左右する要素を多角的にとらえ、取引価格などの根拠をもとに算出されるのが不動産会社の出す査定額です。
インターネットで調べた評価額や査定は正確?
結論、インターネットで調べた不動産の評価額や査定は、目安程度の認識にとどめておいたほうが無難です。
ほぼ購入価格と同等の高い査定や評価額が算出されると、ついその情報を鵜呑みにしたくなりますが、実際の取引の場では買い手の意志も反映されます。
売り手がなるべく高く売りたいと考えるように、買い手はなるべく安く買いたいため、双方の意見のすり合わせが必要です。インターネットで調べた評価額や査定は過去の取引価格が根拠ですが、そうした売買時のやり取りは加味されません。
過去のデータを引用できている点では根拠がありますが、これから売れる未来の予測についての正確性には限界があるのです。
AI査定や一括査定の精度と限界
インターネットで不動産の査定をするときは、AI査定や一括査定といったサービスを利用するでしょう。これらの査定方法は、過去の実際の取引や前述の評価額を使い計算されますが、結局のところ目安になる金額でしかありません。
また、AI査定も一括査定も、算出するための情報をあらかじめ読み込んでいますが、その情報の信憑性や網羅性は定かではないでしょう。つまり、AI査定や一括査定で精度の高い査定額を導き出すには限界があります。
築年数・立地・管理状態といった特性が加味できない
マンションの場合、物件の評価額や査定は、築年数や立地、管理状況も加味しなければなりません。
なぜなら、築年数は建物の評価額に大きく影響を及ぼし、立地や管理状態も物件によって大きく異なるからです。
同じマンション内にある同じ間取りの部屋であっても、階数やペットの飼育・喫煙といった諸条件や生活スタイルの違いで評価額に差が出ます。
AI査定や一括査定では、こうした評価額や査定に影響を及ぼす情報を加味できないため、正確さに限界が出てきてしまうのです。
マンション評価額を正確に知りたいならプロに依頼を
マンション評価額を、より正確に知りたいのであればAI査定や一括査定ではなく、プロの専門家への依頼がおすすめです。ここで言うプロの専門家とは、地域の不動産会社や国家資格を保有する不動産鑑定士になります。
地域に根ざして営業する不動産会社なら、地域特性や直近の取引について熟知しているため、より実際の取引額に近い評価額がわかるでしょう。
不動産鑑定士は、不動産を取り巻く法律も熟知しているため、権利関係が複雑な物件の査定も安心して任せられます。
不動産会社による「訪問査定」とは?
訪問査定とは、不動産会社の担当者が売却予定の不動産を実際に訪問して導き出す査定です。
物件の管理状態や周辺環境をプロが実際に目で見て確認したうえで評価するため、AI査定や一括査定といった簡易査定と比べて精度が高いとされています。
プロに頼むメリット
査定をプロに依頼するメリットは、高い査定がつけば不動産が高く売れる可能性も上がるからです。
査定は、不動産会社や不動産鑑定士による調査をもとに導き出されます。
売買の仲介役を担うプロだからこそ、実際の取引額と大きく乖離するような査定は出さないでしょう。また、仲介役の努力義務として、査定で出た金額に近い価格で売却が成立するよう働きかけてくれます。
つまり、高い査定を出してくれた不動産会社に仲介を依頼すれば、その査定額に近い金額で取引が成立すると考えられるのです。もちろん、売却金額を保証するものではありません。
プロに頼んで査定をおこなえば、その査定額を目指して売却活動をサポートしてもらえるため、より理想的な価格でマンションが売れる可能性が高まります。
マンション評価額を大きく左右する要因とは?
最後に、マンションの評価額が大きく左右される3つの要因をご紹介します。
どの要素も売り手の努力次第で変わるものではなく、どちらかといえばマンションを取り巻く動かせない外的要因であるととらえてください。
つまり、いずれの要因かに大きく売却価格が下がるような要因があれば、何か別の方法で物件の魅力を高めていくしかないのです。
周辺環境と立地条件
マンションの周辺環境とは、スーパーマーケットや病院などといった生活便利施設をはじめとしたマンションの周辺の状況です。
医療関連の施設や教育機関が多い地域だと人気があります。
立地条件の要素は、公共交通機関の駅からのアクセスや日当たりなどです。
建物の特性
マンションの評価額における建物の特性には、築年数や設備、修繕履歴などが該当します。
当然ながら、築浅の中古マンションは不動産市場でも人気が高く、より高い価格で売却される可能性が高いです。
また、築年数は経過しているものの、数年以内にリノベーションがおこなわれており、最新鋭のスマート家電が付帯した物件であれば人気が出ます。
さらに、定期的なメンテナンスと、大規模修繕がきちんとおこなわれている物件は人気です。
マンションであれば管理や修繕は、管理組合や大家さんが主体となっているため入居者個人の努力で何かが変わるものではありません。
しかしながら、建物特性において何かしらの魅力を備えているなら、売却活動時は必ずアピールしましょう。
建築コストや経済情勢
建築コストは建材の価格や人件費、経済情勢は住宅ローンの金利やインフレ(デフレ)などの要因が該当します。
大規模な自然災害が発生したあとは建材の値段も上がり、人口が少なくなればそれだけ人手も不足するため人件費も上がるでしょう。
経済情勢についても、住宅ローンの金利が上がれば家を買おうとする方が減るため、売却の難易度は上がります。
こうした要因によってマンションの評価額は大きく変動してしまうのです。
まとめ|正確な評価額こそ、マンション売却成功の第一歩
マンションの売却を成功させるなら、プロに査定を依頼し、より正確な評価額を導き出しておきましょう。
不動産会社や不動産鑑定士が出してくる査定額は売却価格を保証するものではありませんが、過去の取引や実績をもとに算出されています。
不動産売買の仲介役として、これくらいの価格なら売却をサポートできると踏んでいる価格だと言えるでしょう。
つまり、マンションの売却価格は査定額とより近い金額になると考えられます。
より正確な評価額が判明すれば、次の家の購入資金にも目途が立つので、仲介・査定はきちんとした実績と知識を有するプロの専門家に依頼するようにしましょう。

吉田 健一(有限会社アラウズ 代表取締役)
プロフィール
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/
相続支援コンサルタント(日管協)/不動産キャリアパーソン(全宅連)
宅地建物取引業者・賃貸住宅管理業者である有限会社アラウズの代表取締役として長年の経験を生かして土地建物の利活用の提案、
売買や賃貸住宅等の管理業務などに幅広く対応し、相続の生前対策や財産分与・処分などについて提携税理士や法律家とともに多くの相談を受けている。
また、公益社団法人宮城県宅地建物取引業協会の業務執行理事を務める。