「評価額=売値」ではない?相続した土地を高値で売却するための必勝法」 2025.01.10
- 土地を売りたいけれどその価格をどうやって決めればよいのかわからない
- 土地の価格には種類があると聞いたけれど、その違いはどこにあるのか
- なるべく高く土地を売るためにできることを知りたい
土地の売却は不動産会社の方でない限り、ほとんどの方は初めての経験でしょう。
売却初心者にとって、どういった価格設定をすればよいのかわからないのは当たり前です。
ただこの価格設定によって売買の動向が決まるといっても過言ではないほど重要な点であるのは確かです。
では、その価格の決め方や参考となる指標、また高く売るポイントなどについて解説します。
この記事でわかること
- 土地の価格である評価額と売値の違い
- 売値とはどういった価格で、どのように決めればよいのか
- なるべく高く売るためにおさえておくべきポイント
H2. 土地の評価額と売値の違いとは?
土地を売却する際は価格を設定して売り出しますが、このとき評価額と売値との違いを理解しておかなければなりません。
では土地の評価額と売値との違いはどこにあるのでしょうか。
H3. 土地の評価額とは
土地の評価額は、国などの公的な機関が一定の基準に沿って決めた価格で、相続税や固定資産税などおもに税金を決定するための指標となる価格です。
その土地の価値を、使用目的や面積・状態、また立地など様々な条件と照らし合わせて考慮・決定され、金額として表されます。
H3. 土地の売値とは
売値は第三者によって決められる価額ではなく、売主の判断によって自由に決められる販売価格です。
資産の状態、市場の相場や需要などで常に変動し、市街地などでは評価額よりも高額になることが一般的です。
H3.両者の違いは
評価額は国や都道府県が公的に調査し設定した価格です。
これに対し売値はあくまでも売主の個人的な希望額です。その評価を相当とみなすか、みなさないかは、買主が決めます。従って、売主が設定した価格で即売買が成立するというわけではありません。そのため重要となるのが、不動産業者など専門家による価格の査定と助言です。
H2.土地評価額とは?
ひと口に評価額といっても、実際には様々な種類があり、それぞれの違いを知っておくとよいでしょう。
おもな評価額は以下の5つです。
- 実勢価格
- 公示価格
- 基準地価
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
H3. 実勢価格
まずは実勢価格からみていきますが、これは実際に不動産の取引がおこなわれたときの、具体的な数値を指します。
実勢価格は市場のニーズに影響を受けやすいため、市場価格に近い価格になり、不動産の売却時に価格設定の参考とする方も多い指標です。
ただ、不動産の価格は市場ニーズのみで決まるものではなく、立地やそのときの社会状況、売却の時期などで増減するため、あくまでも参考としてとらえてください。
H3.公示価格
公示価格とは、地価公示法によって国が決める毎年1月1日時点の標準地の価格で、毎年その価格が更新されます。
毎年同じ場所での価格が公表されるため、地価の変動がわかりやすいのが特徴で、売買価格の他に資産評価額の目安にも使われる数値です。
また公示価格には、国土交通省が発表する公示地価と都道府県による基準地価の2つがあり、双方を照らし合わせて参考にするとよいでしょう。
H3.基準地価
基準地価は都道府県が公表している毎年7月1日時点の基準地の価格で、全国に約2万地点の基準地があります。
公示価格とほぼ同じ評価方法であるため、公示価格の補完的な役割として利用してください。
H3.相続税評価額
相続税評価額は財産を相続する際、相続税を算出するその基準となる価格をいい、財産ごとに計算方法が異なります。
土地の評価方法には2種類あり、1つめが路線価方式で国税庁のホームページにある相続税路線価をもとに算出するものです。
2つめは倍率方式で、こちらは毎年市区町村から送られてくる固定資産税課税明細書にある固定資産税評価額に、その土地に定められた倍率をかけて求めるものです。
H3.固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、固定資産税の計算に用いるもので、3年に1度の見直しがおこなわれ、そのたびに税額もかわっていきます。
固定資産税納税通知書、固定資産課税台帳、また固定資産評価証明書で確認できます。
H2.土地の売値(市場価格)とは?その計算方法を解説
売値は売主が希望する価格をいい、売主の個人的な希望や理想が含まれる価格です。
ただ相場とかけ離れた額では買い手がつきにくくなるため、価格の調整が必要です。
価格の調整には各評価額を参考にすると求めやすくなります。
以下、各評価額を基に土地の売値を算出する方法をお示ししますが、これらはあくまで参考となる価格ですので、そのまま売値として設定できるものではないことをご理解ください。
H3. 実勢価格をもとに計算
実勢価格は実際に取引された土地の価格を示しているため、参考にしやすい指標です。
ただ土地の面積や状況、個人的な事情などの条件が異なるため、そのままの価格を自分の土地に当てはめてはいけませんが、参考にする土地の実勢価格÷参考にする土地の面積×所有する土地の面積の式で求めてください。
例えば、参考にする土地の実勢価格が3,000万円、面積が300㎡、 所有する土地の面積が150㎡の場合は、1,500万円程度が売値を設定する際の参考価格となります。
H3. 公示価格をもとに計算
公示価格は国土交通省が提供している不動産情報ライブラリーで確認してください。
わからない場合は所有する土地に近い土地の価格を参考にしましょう。
計算式は、公示価格×所有する土地の面積×1.1です。
例えば、公示価格が20万円/㎡で、所有する土地の面積が200㎡の場合、売値を設定する際の参考価格は4,400万円と計算できます。
ただ、都心部などでは少しの距離でも地価が大きくかわるケースも少なくはないため、その点は注意が必要です。
H3.固定資産税評価額をもとに計算
固定資産税評価額は固定資産税納付書や固定資産税課税台帳などで調べてください。
納税通知書の場合は添付されている課税明細書の価格の欄、固定資産税台帳は市区町村の役所で申請のうえ確認できます。
計算式は、固定資産税評価額÷0.7×1.1で、固定資産税評価額が例えば3,000万円の場合、売値を設定する際の参考価格はおおよそ4,700万円です。
H3.相続税路線価をもとに計算
相続税路線価をもとに売値を計算する場合の計算式は、相続税路線価×所有する土地の面積÷0.8×1.1です。
相続税路線価が15万円で、所有する土地の面積が200㎡の場合、売値を設定する際の参考価格はおおよそ4,100万円が売値の目安です。
この場合の1.1の数値は相続税評価額を算出する際に使う評価倍率で、自分の土地の倍率を調べるには国税庁が運営する路線価図・評価倍率表を参考にしてください。
H2.評価額と売値のギャップが生まれる理由
土地には売主の意思とは別に公的な評価が付けられており、売買の際はその評価額での取引ができると思われがちです。
しかし実際は、評価額と売値との間にはギャップが生まれます。
ではなぜそのような差が生じるのかその理由を考えてみましょう。
H3.売主と買主双方に個人的な事情がある
評価額は国や都道府県が調査して設定する額で、その目的はおもに税額の決定になります。
また不動産売買を健全にすすめるため、公的な指標として定めておくと、相場の安定にもつながります。
ただ土地の売買は、金銭による機械的な取引だけでなく、売る人、買う人それぞれの思惑が含まれます。
例えば、その地域への地縁があったり、売主に突出した経営能力があったりすれば、評価額に関係なく価格が決まるケースもあります。
また債務超過に陥った企業や、住宅ローンの支払いが難しくなった方などは、多少安くても早めに売って現金に換えたいという思惑もあるでしょう。
他にも相続に伴う遺産の分割のためや会社の決算のために早急な売却を望んでいる場合もあります。
このように評価額と離れた価格での取引は、売却を急いでいるなど個人的な事情が入り込むケースも多く、これが売値とのギャップが生まれる理由の1つです。
H3. 不動産会社によって得手不得手がある
不動産会社には得手不得手があり、会社ごとに強みを持っています。
郊外の田園地帯にある不動産会社に、商業地にある物件の売却を依頼しても、買い手は見つかりにくいでしょう。
つまりその会社が持っている顧客の層による得手不得手があり、売りたい土地の性格とこの顧客の層とを合わせる必要があるのです。
売りたい土地と顧客の層が合えば、評価額よりも高い値での取引の可能性も高くなります。
また不動産会社といっても、賃貸物件の仲介をおもな業務としている会社や、管理に重きを置いているところ、土地の売買を専門としているところなど、得意とする業務内容にも違いがあります。
そうした不動産会社の強みを生かして依頼することが、評価額よりも高値で売るためのコツです。
H2.土地を高く売るためのポイント
売主はできる限り高値で売りたいものですが、立地や状態に問題がある場合は難しくなります。
人気のあるエリアの土地であれば、高値で売れる確率は高くなりますが、そうでないエリアの場合、どうすれば高く売れるのでしょう。
では土地を高く売るためのポイントをいくつかみていきます。
H3.古屋付き土地は更地にする
土地が売れやすい状態は、その上になにも建っていない更地であることがメリットとなることが多いです。
更地であれば、買い手はそこに自宅を建てたり、駐車場にしたり、賃貸経営をしたりと自由に活用できます。
しかし古家やブロック塀、看板の基礎などがあればそのままでは活用方法が制限され、利用するために余分な投資が必要になります。
これらの建築物や残置物の撤去にかかった費用は、住宅ローンの対象にはならず、そこにマイホームを建てたい方には条件の悪い土地となり、買い手がつきにくくなるでしょう。
H3.売る時期にも旬がある
土地の売買は需要と供給のバランスや景況などに左右されるもので、言い換えれば値上がり基調のときが売却にとって旬の時期です。
どれほど優れた営業担当者であっても、値下がり基調のときに高く売るのは至難の業でしょう。
公示価格などを参考にして値上がり基調の時期に狙いを絞って売り出すのが高く売るためのポイントの1つです。
H3.値引き交渉を前提とした価格設定をする
売主はなるべく高く売りたいのが本音で、逆に買い手はなるべく安く買いたいと思っています。
そのため売買取引ではほとんどの場合、価格交渉、つまり値引きがおこなわれ、売り手が希望する価格よりも安くなってしまいます。
東日本不動産流通機構による調査では、成約価格は平均で売値の87.5%となっており、これを踏まえて値をつけると希望する価格に近い成約価格になるでしょう。ただし、あまりにも高い価格で売りに出しても見向きもされないというリスクがあることを理解しておいてください。
H2.納得のいく売却のために
土地を売却するときは、評価額と売値の2つの価格がある点に注意が必要です。
評価額は国や都道府県が評価した価格で、売値は売主が自由に設定できる価格をいいます。
評価額と売値が同じ価格になるケースはほぼなく、売主や買主の個人的な事情や不動産会社の得手不得手などが違いが出る理由となります。
また更地にする、値上がり基調のときに売るなどのポイントを押さえると、高く売れる可能性が高まるため、時間的・経済的に余裕がある方は試してください。
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吉田 健一(有限会社アラウズ 代表取締役)
プロフィール
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/
相続支援コンサルタント(日管協)/不動産キャリアパーソン(全宅連)
宅地建物取引業者・賃貸住宅管理業者である有限会社アラウズの代表取締役として長年の経験を生かして土地建物の利活用の提案、
売買や賃貸住宅等の管理業務などに幅広く対応し、相続の生前対策や財産分与・処分などについて提携税理士や法律家とともに多くの相談を受けている。
また、公益社団法人宮城県宅地建物取引業協会の業務執行理事を務める。