不動産を兄弟でスムーズに相続するために:知っておくべきポイント 2025.01.10
- 不動産を兄弟で相続するときはどうすればいい
- 不動産を兄弟で相続する際の手続きの流れについて知りたい
- 兄弟間の相続でトラブルになったら?
ここでは、親が亡くなって兄弟で不動産を相続する方や、手続きの進め方がわからないと悩んでいる方に、相続の具体的な手続きをご紹介します。
不動産の相続に関して兄弟間でよくあるトラブルや、専門家に相談するメリットもお伝えしますので、参考にしてください。
この記事でわかること
- 不動産を兄弟で相続する際の手続き
- 不動産の相続でよくある兄弟間のトラブル
- 不動産を兄弟で相続する際のポイント
不動産の相続と兄弟
亡くなった親が所有していた不動産を兄弟で相続する際、どのような方法で相続を進めていくのかを考えます。
親の生前は仲が良く、家族ぐるみで付き合いがある兄弟でも、相続でもめて絶縁するケースも少なくありません。
民法では法定相続人が決められており、両親が共に他界して財産を引き継いだときには、兄弟が共有している状態になります。
遺産は均等に分割し相続する
兄弟で遺産を分割する場合、均等に分けるのが原則です。
例外的に、家業を手伝っていたときや介護をしていた兄弟は、相続の寄与分として割合を増すこともできます。
生前贈与を受けていた兄弟がいる場合、特別受益があったとみなされると、贈与分が遺産から差し引かれるケースもあります。
持分割合は兄弟の人数で決まる
兄弟の人数で持分割合が変わるため、2人なら2分の1、3人なら3分の1ずつを共有財産として相続します。
兄弟の誰かが住みたいと言ったときは、兄弟全員の同意が必要です。
売却を検討する場合も、全員が売却に賛成しなければ、勝手に手続きはできません。
問題となるのは、兄弟が結婚して配偶者や子どもがいるケースです。
話し合いがまとまるまでに兄弟が亡くなると、相続する権利はその配偶者と子どもに移るため、話し合いはより複雑になります。
兄弟で不動産を相続したらできる限り早期に話し合い、遺産の分割を済ませましょう。
不動産を兄弟で相続する際の手続きの流れ
兄弟で相続する際には、遺言書の有無の確認から始めます。
遺産の取り扱いに関して遺言書に財産の分割について具体的な記載があるときは、法定相続割合よりも優先しなければならないからです。
遺言書の有無にかかわらず、まずやるべきことは相続人と遺産の確定です。
相続人と遺産の確定後、すべての相続人による遺産分割協議をおこない、法定相続とは異なる遺産の分割を行うことで合意した場合、その内容を記した書類が遺産分割協議書です。
全員の署名と実印による押印に印鑑証明書を添えると、遺産分割協議書は完成します。
その後、必要書類を揃えて法務局に出向き、相続登記をおこなって名義変更するのが不動産の相続手続きの流れです。
遺産分割協議のポイント
遺産分割協議が整うまでは、相続財産はすべて相続人全員が共有する状態になっています。
現金や預貯金などは1円単位まで分割できるため話はまとまりやすいですが、不動産は簡単に分割できません。
そのまま共有の状態にしておくと、兄弟の誰かひとりが売却や利用方法を変えたいときや、担保にして融資を受けたいときなどは、所有者全員の同意が必要になります。
そこで、遺産分割協議では誰がどの財産を受け取るのかを決め、共有名義にすることを避けるのがポイントです。
なお、遺産分割協議には、法律などで明確な期限は設定されていません。
とはいえ、被相続人が亡くなった翌日から10カ月以内に相続税の確定申告と相続税を納付しなければならない点を考慮すると、それまでに済ませるのが望ましいでしょう。
くわえて、令和6年4月からは相続登記が義務化されており、被相続人が亡くなってから3年以内に手続きを済ませなければ過料が科されます。
話し合いがスムーズにいくとは限らないため、できるだけ早期に遺産分割協議を開始しましょう。
不動産の分割方法と選択肢
遺産分割協議では、相続人である兄弟全員で、どのように遺産を分配するかを検討します。
考え方の違いなどによるトラブルを回避するためにも、どのような分割方法や選択肢があるかを把握しましょう。
相続放棄
相続する際、引き継ぐに値しない不動産や借金などのマイナス財産は相続放棄できます。
ただし、受け取りたい財産だけを相続できる仕組みにはなっておらず、相続放棄を選択するとすべての財産を受け取る権利を放棄しなければなりません。
そのうえ、相続放棄の手続きは、相続開始(相続を知りえた日)から3ヵ月以内にしなければならない点にも注意しましょう。
被相続人が最後に居住したエリアを管轄する家庭裁判所に申立手続きをおこないますが、不慣れな作業も多いため、弁護士や司法書士などに依頼するのが一般的です。
財産の受け取りは放棄できますが、不動産などの管理責任は残ります。
代償分割
一部の兄弟が生前贈与を受けているなど、兄弟の相続財産に不公平が生じた場合、代償金を支払って相続額を均等にする分割方法です。
先に財産贈与を受けていた側に現金がなければ実行できませんが、不動産を売却した金額から差し引く方法でも対応できます。
親と同居していた兄弟が実家に住み続ける場合や、自営業などで一部の兄弟が事業承継するケースなどで利用する方法です。
換価分割
実家しか不動産がない、誰も住む予定がない実家や遠方の土地などを相続したときに適している手法です。
売却して得た現金を均等に兄弟で分け合うため、不公平がなくトラブルになりにくい方法です。
依頼する不動産業者をどこにするか、兄弟の誰が連絡先になるのか、売却方針や価格設定などを明確に取り決めておくと、トラブルを回避できます。
通常の仲介による売却のほか、短期間に現金化できる不動産業者による買取も視野に入れて話し合いましょう。
分筆による現物分割
相続する不動産が土地の場合に利用される相続方法のひとつです。
分筆とは、1つの土地を分割して登記する手法であり、区画ごとに所有者を決められます。
他の兄弟の同意を得ずに担保化や現金化できる点がメリットですが、相続人が多いときには1人当たりの面積が小さくなり、利用価値が下がる点がデメリットです。
また、土地は日当たりや接道状況などにより価値に違いが生じやすく、同じ面積に分筆しても平等な分割になるとは限らないことにも注意が必要です。
相続でよくある兄弟間のトラブル事例
遺産相続トラブルはよく話題になりますが、とくに兄弟間でのトラブルは泥沼化しやすいため注意が必要です。
どのような相続トラブルが多いのか、ここでは2つの例を紹介します。
遺産の分割協議が滞る
兄弟の人数が多いときや多額の相続財産がある、一部の兄弟だけが家業を手伝っていたケースなどでは、遺産の分割協議が滞りやすくなります。
生前に遺言書を作成して、遺産の分割方法を明示する方も増えていますが、急逝したときなどは遺言書がなく、兄弟間のいざこざに発展しがちです。
なかには、生前贈与による特別受益を得ている方がいたり、寄与分を主張する方もあり、相続人間に不平等感を生じる要因になります。
遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しない点を逆手にとり、遺産分割協議に参加しない、配偶者の反対で同意を見送るケースも珍しくありません。
血を分けた兄弟に対しては遠慮がなく、冷静な対応ができなくなるのも、遺産分割協議が滞る要因です。
不動産の価値評価に相違があった
不動産の評価方法は複数あり、相続財産の目録作成時点でトラブルになるケースもあります。
相続財産の総額は相続税に関わってくるうえ、価値評価が異なると代償分割や換価分割では、その相続人に不満を生じさせる要因です。
評価が低いと受取額が少なくなり、実売価格に近い金額であれば受取額は増える反面、相続税の基礎控除を超えるのも困ります。
相続税は申告する際に現金納付するのが原則になっており、手持ちの資産で対応しなければならないからです。
評価方法には、国税庁が公表している路線価や固定資産税評価額などのほか、不動産会社による簡易査定や不動産鑑定士による鑑定評価などがあります。前者は比較的少額若しくは無料で査定してもらえますが、後者にはそれなりの対価を要します。
遺産分割協議を開始する前に不動産の評価方法の合意を取り付け、気持ち良く話し合いができる準備を整えましょう。
相続手続きを専門家に相談するメリット
相続は複雑な手続きが必要になるため、専門家に相談するのがおすすめです。
自分でも手続きはできますが、間違えたときは取り返しがつかなくなることもありますし、兄弟間のトラブルを回避する提案も期待できます。
相続税は税理士、登記手続きだけであれば司法書士、すでに兄弟間でいざこざを抱えているときは弁護士に相談しましょう。
専門知識でトラブルに対処できる
多くの方は相続手続きに不慣れなため、手続きの進め方すらわかりません。
大切な家族を亡くしてつらい時期に、仕事を続けながら兄弟の話し合いをおこなうのは、負担に感じるばかりです。
普段は仲の良い兄弟であっても、相続になると冷静な対応ができない方も少なくありません。
どのような段階でも、専門家に依頼すると、状況を把握して段取り良く手続きを進め、関係者が納得して円満に解決できる道を探ります。
感情的になって話し合いがまとまらないときには、第三者の立場から冷静な対応や判断などのアドバイスを受けることで、相続後に兄弟の仲たがいを回避できる点も専門家に依頼するメリットです。
相続手続きの手間や労力を省ける
相続手続きは、当事者が市区町村役場や法務局などに出向かなければ手続きできないケースがほとんどです。
窓口業務を受け付けている平日の日中に時間を確保しなければならず、仕事を続けながら相続手続きを段取り良く進めるのは、至難の業です。
仲が悪く連絡を取っていない兄弟の存在や、把握していなかった親が所有していた不動産など、想定外の連続にも冷静な対処が求められます。
ところが、専門家に依頼すると兄弟の誰か1名だけにかかる労力や手間を省いて、遺産分割協議の準備を整えられます。
しかも、費用を兄弟で折半して、相続手続きを進める負担も平等にできるのもメリットです。
まとめ:兄弟での不動産の相続を円滑に進めるために
兄弟で不動産などを相続するときは、遺産分割協議によって不満の残らない分配を目指しますが、冷静な話し合いができないケースも多いのが現状です。
弊社では、相続手続きに精通した複数の専門家と提携しており、不動産の相続手続き全般をサポートいたします。
トラブルが生じた事案でも、ていねいな聞き取りによりお客様のニーズに合わせた解決方法を提案できます。
不動産相続に関する相談を無料で承っておりますので、お困りの方は、ぜひ弊社にお任せください。
吉田 健一(有限会社アラウズ 代表取締役)
プロフィール
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/
相続支援コンサルタント(日管協)/不動産キャリアパーソン(全宅連)
宅地建物取引業者・賃貸住宅管理業者である有限会社アラウズの代表取締役として長年の経験を生かして土地建物の利活用の提案、
売買や賃貸住宅等の管理業務などに幅広く対応し、相続の生前対策や財産分与・処分などについて提携税理士や法律家とともに多くの相談を受けている。
また、公益社団法人宮城県宅地建物取引業協会の業務執行理事を務める。