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遺産相続した土地の活用でお悩みの方へ 2023.11.09

 親族の逝去で土地を相続したものの、どう活用していいかわからない……という方は多くおられます。日本では相続財産の4割を不動産が占めていますが、一般の方にとって土地の活用はあまり馴染みがないもので、「固定資産税もかかるし、どうしたら……」とお悩みの方も少なくないでしょう。
 この記事では、そうした方に向けて、遺産相続した土地の活用法や、それぞれのメリット・デメリットなどを解説しています。

【相続した土地の活用法】

 遺産相続した土地の活用法には、その立地や広さ、更地か建物があるか等によって、実に様々な選択肢が考えられます。よく見かけるものだけでも、以下のような種類があります。

〈更地のまま活用〉
 ・貸地
 ・駐車場(月極駐車場/コインパーキング)
 ・自動販売機置場
 ・資材置場
 ・太陽光発電
 ・野立て看板用地

〈既存の建物がある場合や、建物を新たに建てて活用〉
 ・集合住宅(アパート/マンション)
 ・戸建て賃貸
 ・トランクルーム
 ・倉庫
 ・コインランドリー
 ・コンビニ
 ・ロードサイド店舗
 ・医療施設
 ・保育園(※幼稚園は原則として学校法人の自己所有)
 ・商業ビル

〈その他の活用法〉
 ・売却
 ・土地信託
 ・等価交換

 これらの中には、ある程度の好立地や面積が必要だったり、多額の初期投資が必要だったり、一般の方には扱いが難しかったりと、ハードルの高いものも多くあります。
 ここでは、一般の方でも始めやすい活用法に絞って、その具体的な内容を見ていくことにしましょう。
 今回取り上げるのは、駐車場、トランクルーム、太陽光発電の三種類です。

【駐車場経営(月極駐車場/コインパーキング)】

 更地の土地を相続した場合の、最も一般的な活用法といえるのが駐車場です。土地の状態にもよりますが、設備投資がほとんど必要なく、費用や時間をかけることなく収益化を図れることが最大のメリットです。
 また、駐車場というと広い土地を想像する方が多いかもしれませんが、1台~数台分の広さでも活用が可能で、小回りの利く選択肢といえます。

《駐車場の種類》

 駐車場としての土地活用には、大きく二つの種類があります。

①月極駐車場
 月額の賃料で利用者と契約する形式です。住宅地での需要が特に高く、駐車場の付いていない集合住宅の住人などが主な利用者となります。繁華街でも、近隣店舗の経営者などに需要があります。

②コインパーキング
 不特定多数の利用者を対象とし、時間ごとの駐車料金を得る形式です。繁華街やオフィス街、駅や商業施設の近くでの需要が高く、多くの場合は専門の管理会社に運営を委託できるのも、一般の方にはメリットといえます。

《駐車場経営の方式》

 一般の方が駐車場経営を始める場合、不動産会社や駐車場管理会社の助けを借りることがほとんどでしょう。
 駐車場経営の方式には、施行から管理までを本人が行う「自主運営方式」、施行のみ本人が行い管理は業者に委託する「管理委託方式」、そして土地を丸ごと業者に貸し出して固定賃料を得る「一括借上方式(サブリース)」があります。
 もちろん、自主運営が最も実入りが大きいですが、日々の管理を全て個人で行わなければならないため、他に仕事を持っていたり、相続した土地が遠方の場合は難しいといえます。その点、管理委託ならば、業者に支払う委託料はかかりますが、自ら管理を行う必要がなく、遠方の土地でも経営できるというメリットがあります。
 ただし、自主運営でも管理委託でも、契約台数に空きがあれば、当然その分の収入は発生せず、土地を遊ばせている状態になるというデメリットがあります。そのリスクを回避できるのが一括借上(サブリース)です。主にコインパーキングで利用されている形式であり、管理会社が一括で土地を借り上げ賃料を支払うため、オーナーは契約台数にかかわらず安定した収入を手にすることができます。
 これらの選択肢から、立地やご自身の状況・要望に合った方式を選択することが重要です。

《駐車場経営の収入とコスト》

 駐車場経営によって得られる収入、つまり月極の賃料やコインパーキングの駐車料金は、地域や立地条件によって数倍~10倍以上も相場が異なるため、一概にどのくらいとは言えません。その地域の不動産会社や駐車場管理会社に問い合わせてみるのが最も確実でしょう。 駐車場経営を始めるための初期費用は、月極駐車場の場合、アスファルト舗装工事の費用が約5,000円/㎡程度。コインパーキングの場合、同様の舗装費用に加えて、精算機(40~50万円程度)、フラット板(1台分あたり10万円程度)、照明や看板などの設置費用(70万円程度)などで、120~130万円程のコストが必要になります。
 運営費用としては、月極・コインパーキング共に、メンテナンス費用や修理費用、業者に管理を委託する場合はその費用、そして各種税金などがかかります。

《駐車場経営のメリット・デメリット》

 駐車場経営のメリットは、先述のように初期費用や手間がほとんどかからず、比較的すぐに収益化を図れることです。また、小さな土地でも行えるため、一般の方の相続土地の活用に向いています。さらに、駐車場には借地借家法の適用がなく、住居のように借主の権利が強く守られているということがないため、将来他の目的で土地を活用したくなったときに、転用が容易であるという利点もあります。 一方、駐車場経営のデメリットは、固定資産税や相続税などの控除がなく節税効果が低いことや、アパート経営などと比べると収益が高くないこと、一括借上でない場合は空車のリスクがあることなどです。
 総じて、ローコスト・ローリターンの活用方法といえるでしょう。

【トランクルーム経営】

 相続した土地の活用法として、近年注目が高まっているのがトランクルームです。業者向けの貸倉庫のような大規模なものではなく、個人の利用者に小規模な収納スペースを貸し出し、利用料を得るというものです。
 従来は都市部限定の活用法というイメージがありましたが、最近では宅配型トランクルームの普及に伴い、地方・郊外の土地でも活用できるようになっています。

《トランクルームの種類》

 トランクルームの種類には、従来の屋内型・屋外型に加え、近年普及してきた宅配型があります。
①屋内型
 土地にトランクルーム専用の建物を建てたり、既存の建物を改装してトランクルームに転用する方式です。一般の方の場合、初期費用の少ない後者の形で始めるのが現実的でしょう。特に都市部での需要が高く、空調やセキュリティ面などの設備投資も重要となります。
②屋外型
 土地の上にコンテナを設置し、トランクルームとする方式です。地方・郊外での開設が一般的です。コンテナ設置費用はかかりますが、建物を建てるのと比べると大幅に安い費用で始めることができます。
③宅配型
 宅配業者との連携により、ウェブサイト・アプリを通じた荷物の預け入れや受け出しを提供するサービス形態です。荷物の保管場所は遠方でも構わないため、利用者が直接来られないような地方の土地でも活用できるメリットがあります。既存建物の転用、コンテナ設置のいずれでも運営可能で、トランクルームの管理自体も宅配業者に委託することができます。

《トランクルーム経営の方式》

 トランクルーム経営の方式にも、駐車場と同様に「自主運営方式」「管理委託方式」「一括借上方式(サブリース)」がありますが、一般の方が個人で集客や管理を行うのは難しいため、実質的には管理委託か一括借上の二択となるでしょう。

《トランクルーム経営の収入とコスト》

 トランクルーム経営で得られる収入は、立地や部屋数によっても異なりますが、屋内型なら1区画あたり1万5千円前後、屋外型なら1区画あたり1万円前後が目安となります。宅配型は主に月額制で、荷物を預かっている期間のみ料金が発生するという形で、また違った収入体系になってきます。
 トランクルーム経営を始めるための初期費用は、既存の建物を利用する場合、100~200万円程度。コンテナの場合、1基あたり100~150万円程の設置費用がかかるのが一般的です。加えて、運営費用として業者に支払う管理料や、電気代、各種税金などがかかってきます。

《トランクルーム経営のメリット・デメリット》

 トランクルーム経営のメリットは、初期費用や管理費用が比較的少なく、また駐車場と比べても小さい土地や立地の良くない土地でも活用できることです。既存の建物を転用する場合でも、借家として貸し出すのと比べるとリフォーム費用などが掛からず、やはり初期費用を抑えられるのが利点といえます。また、トランクルームの需要は今後も右肩上がりになるとみられ、空室の心配もそれほどないと言えるでしょう。
 トランクルーム経営のデメリットは、駐車場のデメリットとほぼ重なります。即ち、固定資産税や相続税の控除がなく節税効果が低いこと、収益性があまり高くないこと、一括借上でない場合は満室稼働まで時間がかかることなどです。また、第一種低層住居専用地域や市街化調整区域など、法律でトランクルームの設置が禁止されている地域もあるため注意が必要です。

【太陽光発電】

 地方・郊外の広い土地を相続した場合の選択肢として、近年根強い人気があるのが太陽光発電です。太陽光パネルを設置し、発電した電力を電力会社に売電したり、土地自体を太陽光発電の専門業者に貸し出して地代を得るという方法です。
 山間部など、面積は広くても駐車場や住居などには活用できない立地であっても、場所を選ばず行えるのが最大の利点です。

《太陽光発電事業の種類》

 太陽光発電で収入を得るには、自営と土地賃貸の二つの方法があります。

①自営
 オーナーが自己負担で太陽光パネルを設置し、電力会社に売電することで利益を得る方式です。
 この方式の大きなメリットの一つは、国の施策である固定価格買取制度(FIT制度)により、事業用なら20年、家庭用なら10年の期間にわたって、固定価格で国が電力を買い取ってくれることです。これは、初期費用の還元を保証することで多くの人が太陽光発電に参入しやすくするという意味合いの制度であり、そのため、発電設備の導入費用の低下にともなって、買取価格は年々引き下げられてはいます。
 2023年現在は、今から開始しても十分な利回りを得られる状況にあるといえますが、今後、導入費用の低下より早いペースで買取価格が下がっていく可能性もあるため、関心のある方は早めに導入を検討するとよいでしょう。

②地代収入
 土地そのものを太陽光発電の専門事業者に貸し出し、地代収入を得るという方式です。自営と比べると収益性は低くなりますが、設備の導入費用や維持管理のコストは業者持ちとなるため、初期投資なしで収益化を始めることができます。

《太陽光発電の収入とコスト》

 太陽光発電で得られる収入は、立地条件や広さによって大きく異なるため一概には言えませんが、500㎡(150坪)の土地で年間60~150万円程が目安となります。
 一般的に、土地が広いほど多くの太陽光パネルを設置することができ、そのぶん導入単価が下がるため、広ければ広いほど収支の面で有利といえます。特に、設置容量が50kW未満の場合(土地面積にして500㎡程のライン)、発電した電力の30%は自家消費しなければならないため、これを超える広さでなければ、電力の100%を収益化することはできません。
 太陽光発電を始めるための初期費用は、整地などの費用に加えて、発電設備の設置費用が、発電容量1kWあたり22~25万円程です。運営費用としては、メンテナンス費用や修理費用、各種税金などがかかります。

《太陽光発電のメリット・デメリット》

 太陽光発電のメリットは、商業利用には向かない地方や山間部の土地でも収益化できることや、国の政策のもと長期に渡って安定した収入が得られること、管理の手間や維持費用が比較的かからないことなどです。建物を自由に建てられない市街化調整区域でも、太陽光発電なら農地以外であれば設置することができます。また、電力の一部は自家消費することもできるため、電気代の削減にもなります。
 一方、太陽光発電のデメリットとしては、アパートや駐車場経営と比べると収益性が低く、短期での投資回収は見込めないことです。また、台風や地震などの天災に弱く、修理費用がかさむ場合もあります。さらに、近年ではケーブルなどの盗難被害も増えており、それを防ぐための防犯設備にもコストをかける必要が出てきています。ある程度の広さがない土地や、日当たりの良くない土地にはそもそも向かないという特徴もあります。
 総じて、地方部の土地を相続して、他の活用法が思い当たらないという方に向いた方法といえます。