前妻の子の相続権を守る!後妻とその子供に遺産を奪われないための対策 2025.06.18

<このようなお悩みの方へ>
・前妻の子にも、遺産を残せる?
・後妻の子だけに相続されないための対策はある?
・前妻の子が、相続を受けるためにすべき対策はある?
前妻との間に生まれた子の遺産に関する権利(相続する権利)は、法律でしっかりと守られています。
しかし、後妻との間に新たな家族が築かれると、財産の分割をめぐって複雑な問題が生じる可能性も少なくありません。
本記事では、遺産を適切に承継するための対策について、具体的な方法を解説します。
<この記事でわかること>
・前妻の子の遺産に関する法的保護
・相続権を守るための具体的な対策
・遺産分割での正当な権利を確保
1.前妻が子の相続する権利は法律で守られている
前妻の子にも、法律で定められた遺産を相続する権利がしっかりと保障されています。
後妻の子と同様に「法定相続人」としての権利を持ち、遺産分割では平等な立場で扱われます。
では、具体的にどれくらいの財産を受け取れるのでしょうか?
ここでは、前妻の子の権利について解説します。
前妻の子も「法定相続人 」相続する権利は後妻の子と平等
民法では、前妻との間に生まれた子どもの遺産に対する権利は、しっかりと保護されています。
亡くなった父親の遺産では、前妻の子供は後妻の子供とまったく同じ法的地位を持ち、平等に財産を受け取る権利があります。
この原則は、日本の遺産分割法の基本に基づいた考え方です。
実子であれば、嫡出子(婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子)か非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)かの区別なく、平等な取り分が法律で保障されます。
再婚によって家族構成が変わっても、血縁関係にある子どもはすべて法定相続人として扱われ、その権利は変わりません。
たとえ家庭内で疎遠になっていたり、親子関係が希薄になっていたりしても、法律上の相続権に影響はありません。
兄弟姉妹であれば、母親が異なっていても、同じ父親を持つ場合は平等に扱われます。
前妻の子にも法定相続分に基づいた公平な財産分割が行われることになります。もちろん、協議により分割の割合を変えることはできます。
法定相続分の計算|前妻の子の取り分はどれくらい?
配偶者(後妻)と子の間で遺産が分割される割合は民法に定められています。
亡くなった方の配偶者である後妻には、法定分として全財産の2分の1を相続する権利があります。
残りの2分の1は、すべての子たちの間で平等に分割されます。
この際、前妻の子も後妻の子も区別なく、同じ割合で遺産を受け取れることが法律で保障されています。
つまり、子の数に応じて残りの財産が均等に分けられるのです。
たとえば、前妻との間に1人、後妻との間に2人の子供がいる場合、後妻が相続したあとの残りの2分の1は3等分され、前妻の子も後妻の子もそれぞれ全体の6分の1ずつを相続します。
このように、血縁に基づく権利は平等に保護されていて、再婚の有無によって差は生じません。
相続分の計算例を、以下の表にまとめました。
ケース1: 前妻の子1人、後妻の子なしの場合
相続人 | 相続分の割合 | 相続財産が1億円の場合 |
後妻 | 1/2(50%) | 5,000万円 |
前妻の子 | 1/2(50%) | 5,000万円 |
ケース2: 前妻の子1人、後妻の子1人の場合
相続人 | 相続分の割合 | 相続財産が1億円の場合 |
後妻 | 1/2(50%) | 5,000万円 |
前妻の子 | 1/4(25%) | 2,500万円 |
後妻の子 | 1/4(25%) | 2,500万円 |
ケース3: 前妻の子1人、後妻の子2人の場合
相続人 | 相続分の割合 | 相続財産が1億円の場合 |
後妻 | 1/2(50%) | 5,000万円 |
前妻の子 | 1/6(約16.7%) | 1,667万円 |
後妻の子A | 1/6(約16.7%) | 1,667万円 |
後妻の子B | 1/6(約16.7%) | 1,667万円 |
ケース4: 前妻の子2人、後妻の子1人の場合
相続人 | 相続分の割合 | 相続財産が1億円の場合 |
後妻 | 1/2(50%) | 5,000万円 |
前妻の子A | 1/6(約16.7%) | 1,667万円 |
前妻の子B | 1/6(約16.7%) | 1,667万円 |
後妻の子 | 1/6(約16.7%) | 1,667万円 |
※計算式: 子どもの取り分 = 相続財産の1/2 ÷ 子どもの総数
この表を参考にすると、前妻の子の取り分が具体的にどう計算されるかがわかりやすくなります。
ポイントは、まず配偶者(後妻)が遺産の半分(1/2)を取得し、残りの半分を子どもたちが平等に分け合う点です。
子どもの数が増えるほど、一人あたりの取り分は小さくなりますが、前妻の子も後妻の子も同じ割合で権利が保障されているのがわかります。
2.前妻の子が相続を受けるために必要な手続き
前妻の子が正当な取り分を確保するためには、具体的な手続きがあります。
ここでは、必要な手続きを詳しく紹介します。
遺産分割協議に必ず参加する
前妻の子にとって最も重要なのは、遺産分割協議から除外されないことです。
法定相続人であるにもかかわらず、協議に参加できなければ、正当な権利を主張する機会を失ってしまいます。
そのため、父親が亡くなった情報を得たら、速やかに自分が相続人であることを後妻やその家族に伝え、協議の場に確実に参加できる機会を確保することが重要です。
遺産分割協議では、自らの法定相続分について積極的に主張しましょう。
黙っていると権利を無視されるリスクがあります。
必要であれば弁護士などの専門家に相談し、サポートを受けることも検討すべきです。
また、父親の借金などの債務が心配な場合は、開始を知った日から3か月以内に放棄や限定承認の手続きを検討する必要があります。
この期限を過ぎると原則として債務を含むすべての財産を引き継ぐため、早めの判断が大切です。
自分の権利を守るためには、法的手続きの知識と適切な行動が不可欠です。
遺言書がある場合の対応
父親が遺言書を残していた場合、その内容は原則として優先されますが、前妻の子どもにも「遺留分」といわれる財産を受け取る権利が法律で保障されています。
遺言書によって完全に排除されていた場合でも、遺留分を請求することが可能です。
遺留分:
法定相続人に対して法律で最低限保障される権利。
法定相続分の2分の1の割合となります。
たとえば、法定相続分が6分の1の場合、遺留分は12分の1です。
遺言によって遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求といわれる手続きができます。
遺言内容が著しく不公平であったり、前妻の子どもを意図的に排除するような内容であっても、遺留分は法的保護があるため安心してください。
ただし、遺留分侵害額請求には期限(相続が開始したこと、遺留分を侵害する相続、遺贈があったことを知った時から1年以内、または遺留分の侵害を知らなかった場合でも、相続の開始から10年以内)があり、早めに弁護士などに相談することが重要です。
遺留分は民法で定められた強行規定であり、遺言者の意思よりも優先して保護される権利です。
自分の正当な権利を守るため、積極的に行動しましょう。
遺言書がなくても、法定相続分は確保できる
遺言書がない場合は「法定相続」となり、民法の規定にしたがって遺産の分割がおこなわれるため、前妻の子としての法定相続分は確保できます。
遺言書がないからといって不利にはなりません。
手続きを進めるためには、まず亡くなった父親と自分との法的な親子関係を証明する戸籍謄本や除籍謄本などの書類の準備が必要です。
とくに前妻の子の場合は、両親の離婚や再婚の記録も含めた複数の戸籍関係書類が必要となる場合が多いため、早めに準備を始めることをおすすめします。
手続きには財産調査や分割協議など複雑な過程があるため、司法書士や弁護士などの専門家に相談しながら進め、スムーズに自分の権利を確保するのが重要です。
法律の専門家のサポートを受けながら、後妻側との交渉も円滑に進むことが期待できるでしょう。
自分の正当な権利を守るために、慎重かつ積極的な対応が大切です。
3.後妻が前妻の子の相続分を減らそうとする手口と対策
後妻やその子供が前妻の子の取り分を減らそうとするさまざまな手口があることを知っておく必要があります。
ここでは、取り分を減らす手口と、適切な対策を紹介します。
養子縁組を利用して相続分を調整しようとする
被相続人と後妻との間に生まれた子は相続人としての権利を有しますが、後妻の連れ子には相続権がありません。そのため後妻が連れ子にも相続させようとする場合、夫(被相続人)と連れ子を養子縁組させることがあります。
養子縁組は、遺産の分割において法定相続人を増やし、相続分を調整する手段としても用いられますが、この行為は他の相続人の相続分を減少させるため、トラブルに発展する可能性があります。
養子は実子と同様の権利を持つため、法定相続分は養子の数に応じて変動します。
税金の計算でも、養子の数は基礎控除額や非課税枠に影響します。
ただし、税法上、法定相続人に含める養子の数には制限があります。
養子縁組が税対策のみを目的とする場合、税務署から否認されるリスクもあるでしょう。
他の相続人との間で感情的な対立が生じる可能性にも配慮する必要があります。
養子縁組をおこなう際は、弁護士や税理士などの専門家に相談し、適切な手続きを踏むことが重要です。
遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停の申し立ても可能です。
養子縁組による相続分の調整は、慎重な検討と専門家の助言が不可欠です。
なお、養子縁組によらず遺言でも同じような効果をもたらすこともありますので、被相続人の生前から相続が発生した時の対応について話し合いをしておくことが肝要です。
財産を生前贈与して相続財産を減らす
生前贈与により遺産を意図的に減らそうとする可能性もあります。
このような行為は、法律上、不正な財産隠しとみなされる可能性もあり、専門家に相談して、適切な対応を取ることが大切です。
後妻が遺産を隠す・使い込むケース
後妻が遺産を隠す・使い込むケースは、遺産問題のなかでもとくに難しい局面です。
後妻が預金通帳や重要書類を独占して遺産の全容を明らかにしない場合があります。
また、配偶者の認知機能の低下(障害)や入院中に、財産を自分名義に移したり、生前贈与の形で家族に分配したりするケースもあるでしょう。
分割協議の前に預金を引き出して使い込んでしまう場合もあります。
このような場合、遺産の全容を把握するために、預金取引履歴の開示請求や不動産登記簿の調査など、専門家の協力を得て調査を進めることが重要です。
また、使い込まれた財産については、遺留分侵害額請求や不当利得返還請求などの法的手段を検討する必要があります。
4.相続トラブルを避けるためにやるべきこと
遺産は家族の絆と財産を分かつ繊細な問題です。
トラブルを未然に防ぎ、スムーズな分割を実現するためには、事前の準備と対策が欠かせません。
家族間のコミュニケーションと法的な知識が、円滑な遺産分割の鍵となります。
トラブルを防ぐために最も重要な対策は以下のとおりです。
遺言書は自分の意思を明確に伝える最も確実な方法です。
財産の分割方法を具体的に記載すれば、相続人間の争いを未然に防げます。
すべての財産を把握し記録しておくことも重要で、不動産、預貯金、有価証券、保険など、漏れなく目録化しておきましょう。
家族とのコミュニケーションがもっとも重要です。
生前から遺産について家族で話し合えば、将来の誤解を防げます。
特別な贈与や遺贈の意向がある場合は、その理由も含めて伝えておくと良いでしょう。
家族の話し合いの機会を持ち、財産の状況や本人・相続人の希望を共有することが大切です。
税理士や弁護士など、専門家に相談すれば、法的・税務的なリスクを軽減できます。
遺言執行者の指定も検討し、遺言の内容が確実に実行されるよう準備することが重要です。
早めの対策と準備が大切な人々の将来を守ります。
遺産の分割は避けられない問題ですが、事前の準備で多くのトラブルを回避できます。
まとめ|前妻の子の相続権を守るために大切な対策
前妻の子の権利は法律で保護されていますが、その実現には専門的な知識も必要です。
遺産問題でお悩みの方は、アラウズにご相談ください。
当社は各種士業との強いネットワークを持ち、手続きから資金計画まで一貫したサポートを提供しています。
代表自らの相続の経験を踏まえた対応により、複雑な遺産分割でも丁寧なヒアリングを通じてお客様に最適な提案をいたします。
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吉田 健一(有限会社アラウズ 代表取締役)
プロフィール
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/
相続支援コンサルタント(日管協)/不動産キャリアパーソン(全宅連)
宅地建物取引業者・賃貸住宅管理業者である有限会社アラウズの代表取締役として長年の経験を生かして土地建物の利活用の提案、
売買や賃貸住宅等の管理業務などに幅広く対応し、相続の生前対策や財産分与・処分などについて提携税理士や法律家とともに多くの相談を受けている。
また、公益社団法人宮城県宅地建物取引業協会の業務執行理事を務める。